もぐもぐコラム

信州の食材で和やかな食卓

今から22年前のこと、酒蔵の一角に「和やかな食卓の実現」というテーマを掲げて自社のアンテナショップ「セラ真澄」を立ち上げました。きっかけになったのは欧州のワイナリーへの視察ツアー。時はまさにお客様のライフスタイルや食生活が激変し、内外のさまざまなアルコール飲料が世の中に溢れかえって日本酒の売り上げに陰りが見え始めた頃で、懇意の蔵元たちと「愚痴をこぼしてもしょうがない。ワインメーカーが何をやっているか自分の目で確かめに行こう!」ということになったのです。

分かったのは、一見華やかに見えるワインメーカーも実は売上の低迷に苦しんでいること。そして様々な打開策を講じて必死の努力を重ねていること。その中で私達が最もワクワクしたのは、ワイナリーを訪れたお客様にブドウ畑や醸造施設をお見せしたり、お洒落なグッズを揃えたショップや地元食材を使ったレストランで買い物や食事をお楽しみいただいて、とにかくお客様とワインを友達関係にしようというワインツーリズムの取組でした。

欧州視察の様子

そこで帰国後すぐに、たまたま空いていた旧事務所を改装して試飲コーナーを設け、夕食が楽しくなりそうなテーブルウェアや安心安全な食品を自社のお酒と共に販売する計画をスタートさせたのです。

嫁いで10年目のこの頃、母からは野沢菜漬けやさまざまな酒粕漬けの造り方は伝授してもらってはいましたが、まだまだ信州の食について不勉強だった私を大いに助けてくれたのは農業改良普及センターの方々でした。信州の厳しく豊かな気候や風土の中で、ユニークで美味しい作物を育てておられる農家の方々や農産加工品を造っている方々とのご縁は私にとってかけがえのない宝物です。

欧州のレストランにて

このご縁を生かして、いつの日か欧州のワイナリーのように、信州食材と共に渾身の美酒を味わっていただく酒蔵レストランでも持てたらいいなと夢見ています。


宮坂 公美
おいしい信州ふーど公使
宮坂 公美さん
宮坂醸造株式会社セラ真澄 ショップディレクター
「酒のある和やかな食卓」をテーマに、日本酒を通じて食と器の魅力を国内外に向け、「おもてなし」の楽しみとして発信